「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パスで行く道東の旅」2日目の続きです。根室駅からレンタサイクルを使い、本土最東端の納沙布岬を目指します。
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レンタサイクルを借りる
8時に根室駅に到着した。これからレンタサイクルを借り、20㎞ほど離れた本土最東端、納沙布岬を目指す。駅から岬まではバスも運行しているが、ずっと乗っているだけでは退屈である。少しは体を動かしておきたい。お金を節約したいというのもある。
根室駅は小さな駅だ。隣の東根室が「日本最東端の駅」であるが、こちらは「日本最東端有人の駅」と名乗っている。今日はこれ以外にも、様々な「日本最東端」に出会えそうである。
駅の横にある観光案内所でレンタサイクルを借りようとしたが、尋ねてみると予約で埋まっているという。事前に調べた時点でレンタサイクルは3台ほどしかないこと、そして予約が可能であることは分かっていたが、まさか出払ってしまうことはないだろうと考えていた。意外に需要はあるようだ。
困ったことになったと思ったが、レンタサイクルの貸し出しを行っている近くの民宿を教えていただいたので、行ってみることにする。
行ってみると入り口に誰もいない。時刻は8時半、朝食やチェックアウトなどで忙しいのかもしれない。微妙な時間に来てしまったかと申し訳なく思っていたが、少し待つと係の方が来られ、丁寧に対応してくださった。
自転車も様々な種類があり、何台か見せてくださった。納沙布岬まで行くならさすがにママチャリではきついということで、大人しくマウンテンバイクを借りることにした。
なかなかかっこいい。この自転車は他のマウンテンバイクと違い、メーカーものだからか少し高かった。それでも1,500円である。おすすめしてくださったし、今後このような自転車に乗る機会もあまりないかと思いこれに決めた。漕ぎ心地はよかった。
今日の旅を共にする相棒を手に入れ、いざ本土最東端へ出発である。
北側ルートで納沙布岬へ
根室市街から納沙布岬へ行くには、半島の北側と南側を回るルートがある。バスは南ルート経由だ。しかし、せっかくなら両方のルートを通ってみたい。ということで、北側ルートで行って南側ルートで帰ることにした。
写真は根室振興局である。「考えよう みんなで解決 北方領土」というスローガンが掲げられている。北方領土については授業で習ったり、ニュースで見たりするものの街中でこのようなスローガンを見かけることはない。北方領土に近い町であるということを思い知らされる。
それほど大きくない根室の町をすぐに抜け、港を過ぎて少し行くと、牧場が広がってくる。
とにかく広い。そしてたくさんの牛たちが草を食んでいる。まさに北海道、という雄大な景色である。
さらに少し走ると、海とその向こうに山々が見えてきた。中央のなだらかな山は見覚えがある。国後島のようである。では右は…択捉島の一部だろうか。
道は緩やかなアップダウンが続く。車はほとんど通らず、歩いている人も全く見かけない。たまに自転車とすれ違うが、みな本格的な装備に本格的な自転車である。こちらはパーカーにジーパン、全くの普段着であるが、自転車だけはかろうじて張り合えている。おすすめのものにして正解であった。
ところどころに、木々が海と反対方向に曲がって生えている。ミズナラのようだ。強風や雪などによって曲がっていったものらしい。環境の厳しさを感じさせる。
左側にはずっと海と島々が見えている。さらにその奥にうっすらと見えているのは知床連山だろうか。
本当に車も人もほとんどいない。広大で美しい北の大地を独り占めである。なんとも贅沢だ。
このあたりには様々な文化遺産もあるようだ。チャシというアイヌ民族の聖地や砦が残っているところもあり、実際に一か所見つけたが、草木が生い茂っていて入りにくかったので断念した。
写真を撮ったり景色を味わったりしながら、ゆっくりと1時間半ほど漕いだところで北方原生花園という場所に到着した。根室市内から12㎞ほど、だいたい納沙布岬との中間地点である。
入り口には柵があったものの、誰でも自由に出入りできるようになっている。この柵は放牧されているポニーが逃げ出さないようにするためらしい。
園内には木道が整備されている。シーズンには100種類もの花々が咲き乱れるというが、この日は9月中旬。やや遅かったらしい。
それでもところどころに花や実?が見られた。
それらを見ながら進んでいると、ポニーたちが現れた。蹴られたりしないかと心配しながら近づいてみたが、これが限界であった。僕はかなりの心配性である。
それにしても今日は牛に馬に、多くの動物を見ている。
そしてここにも、ミズナラが群生していた。このように群生していることは貴重なものだという。
広い草原に屋根の下に集まるポニー。絵になる風景だ。花が咲き誇っている時期にも来てみたい。
トイレ掃除をしてくださっている地元の方がおられたので見えている島々について尋ねてみると、左の山は知床連山で、そのほかは全て国後島だという。
ちょっとどれがどの山かは忘れてしまったが、とにかく国後島の大きさ、そして近さに圧倒されてしまった。調べると、国後島は沖縄本島よりも大きいという。確かに地図で見ればそうではあるが、実際に見てみると感じ方が違う。
ちなみに、「今日はよく見えている、運がいい」ともおっしゃっていた。天気はやや曇っているが、晴れていても霧が出てしまうので国後島は見えないらしい。本当に運が良かったようだ。
30分ほどの散策を終え、再び自転車を走らせる。
久しぶりにトラックに抜かれた。日本とは思えないような風景だ。
自転車を走らせていると、「カサカサッ」という音がしたので見ると鹿が何頭かいる。
一目散に逃げていったが、出会えてうれしかった。ちなみにこの後キツネも見かけた。北海道は動物園に行かずとも様々な動物を見られる。
走っていると、ところどころに「返せ!北方領土」という看板を見かける。国後島がこれだけ近くに見えるのだから、このような思いが生まれるのも当然だと思う。どこか他人事だった北方領土問題への意識が変わった。
原生花園を出て40分ほど走ると、久しぶりに小さな集落が出てきた。港もある。こんな最果ての地によく住んでいる人がいるものだ。
さらに少し走ると、温根元という地区に入った。小学校もあったが、廃校となっていた。
この辺りになると牛ではなく馬が放牧されていた。
温根元の集落を過ぎると、やっと「納沙布」の文字が登場した。展望タワーも見える。もう少しで到着だ。
本土最東端 納沙布岬に到着
12時半、根室を出てから3時間半かけて納沙布岬に到着した。寄り道しなければもっと早く着けるだろうが、景色を楽しんだり写真を撮ったりしているとこれくらいはかかってしまうかもしれない。
四島の架け橋というモニュメント。北方領土返還を祈念して作られたそうだ。
「本土最東端」の文字がある。東の果てに来た実感が湧いてくる。
しかしここはあくまで「本土」最東端である。すぐそこに見えている北方領土のことを忘れてはならない。日本の最東端は択捉島だ。
納沙布岬灯台。本土最東端の灯台である。1872年に、北海道で初めて設置された灯台だという。
歯舞群島方向。うっすら見えている島もある。
国後島も良く見えていた。
本土最東端の景色を目に焼き付けたところで、北方領土資料館に向かう。入場は無料だ。
北方領土の島々や歴史について学ぶことができる。目の前に北方領土の島が見えているので、より身近な問題として捉えられた。
最東端到達証明書をいただくこともできた。
時刻は14時前。ここでお昼にしたいが、根室16時発の列車に乗らなければならないので、ゆっくりはしていられない。しかし「サンマ丼」の文字に惹かれ、食事をとっていくことにした。
新鮮なサンマがたっぷり乗っている。ゆっくり味わいたいところだが時間がないので急いで食べ、ものの10分で完食した。とてもおいしかった。
昼食を終えたところで、帰路につく。納沙布岬には1時間半ほどの滞在であった。
南ルートで根室へ
行きとは逆の、半島の南側を通って根室に戻る。時刻は14時15分。16時12分の列車に乗らなければならないが、行きは3時間半かかっている。北ルートと南ルートの距離の差はあまりないので、かなり飛ばさなければならない。しかも自転車を返す時間も考えると、1時間半で着いておきたいところだ。
日本最東端のポストや駐在所を見ながら、納沙布岬を後にする。
日本最東端の郵便局。記念にお金をおろしておいた。
南ルートからも遠くにうっすら国後島が見える。
「歯舞」という文字が見える。「歯舞群島」といえば北方領土のうちの一つであるが、同じ地名が本土にも残っている。昔はつながりがあったのだろうか。北方領土との近さと結びつきを感じる。
おそらく日本最東端のコンビニ。北海道らしくセイコーマートだというのが良い。ついでにここでもハイチュウを買っておいたが、レシートをもらい損ねた。
途中にあったバス停。立ち寄りたくなる名前であるが、そんな暇はない。
南ルートは太平洋に沿って走るが、小さな集落が連続している。車も多い。こちらの景色も悪いわけではないが、個人的には北ルートのほうが好きだ。
ほとんど休憩せずに飛ばし、15時40分頃、根室の街中まで帰ってきた。狙い通り1時間半ほどで到着である。人間追い込まれればなんとかなるものだ。
レンタサイクルを返却し、駅へと戻る。少し距離は長かったが、北海道の雄大な自然を楽しむことができた素晴らしいサイクリングだった。
札幌へ
16時12分発の釧路行きに乗車する。後は帰るだけだが、今日中に札幌まで戻るので、これから7時間列車に乗らなければならない。やはり北海道は広い。
行きは人が多くて撮影し損ねた東根室駅。かろうじて駅名標だけ撮ることができた。
落石岬。1日に2回もこの絶景を眺められるとは幸せだ。
その後も列車に揺られ、18時51分、釧路に到着する。札幌行き特急「おおぞら」出発は18時59分。あと8分あるので、駅のコンビニで夕食を買おうとするが、レジが大行列である。間に合うか不安に思いながら待っていたが回転はよく、なんとか間に合った。
JR北海道の特急列車に特徴的な設備として、チケットホルダーがある。検札の際などに便利ではあるが、降りるときに忘れそうで怖い。
座席のポケットには雑誌もある。なかなかサービスは良い。
この列車に揺られること4時間、札幌駅に到着した。今回の旅はこれで終わりである。1泊2日のあわただしい旅であったが、北海道の大自然を堪能できた。
ちなみに今日利用したJRの区間を普通に乗ると14,300円、昨日と合わせると27,170円になる。12,000円のきっぷなので2日ですでに2倍以上元をとっている。今振り返ってみてもこのきっぷはすごいと思う。
これで「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊パスで行く道東の旅」は終わりです。長々とお付き合いいただきありがとうございました。
次は「札幌発宗谷岬日帰り旅」です。いつか投稿するのでよければ読んでください!